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さまよえる少年たちの“お兄さんお姉さん”として
ともだち活動の中で互いが育てられる

  非行に陥ったり、陥りそうになった少年たちの話し相手として活動するボランティアがある。少年たちが少しでも心を開いて話ができるようにと、友達となるのは同世代の若者たち。少年たちの“お兄さん、お姉さん”として、地域の中でふれあいながら、同じ目線で相談相手になる。
 昭和22年、戦後の混乱期の中、あふれる浮浪児や孤児たちへ「何かできないだろうか」という京都の学生たちの思いが、BBS運動のスタートとなった。BBSとは、Big Brothers and Sisters Movementの略。運動は全国へ広がり、時代を越えて引き継がれて来た。千葉県では、昭和26年、千葉大生らによって始まった。現在、県内には12地区会、250名のメンバーがいる。そのひとつ、20名が活動する千葉中央地区BBS会の定例会を訪ねた。
 全国の各地区会では、それぞれの地域の特色を生かした様々な活動を展開。千葉中央地区BBS会では、2カ月に一度、保護観察中の少年たちとの交流会を開催する。郷土を知る目的で、千葉市6区を歩くグループワーク『ア・ロック』だ。会長の前原章人さん(41)は「ただ、話をしましょうと言っても、返って話しにくいものです。駅から目的地まで歩けば、自然に会話もはずみます。以前、若葉区の加曽利貝塚で土器を使って料理をするという催しをしました。集ってみんなで作った料理を食べるのも初めて、という普通の環境になかった少年も多かった」と話す。
 犯罪や非行に陥るには、様々な原因がある。自身の存在理由が見あたらず自分探しをして、さまよい、気付いたら罪を犯していたというケースもめずらしくないという。また少年たちの気持ちに家庭や社会が応じきれなかったという構図もある。「不幸にして非行を行わざるを得なかった少年と私は人間としての素質は変わらないはずです。BBSの活動を通してそのことに気付かされました。人間関係や、その環境に少しばかり恵まれなかった少年と同じ目の高さで向き合い、少年の悩みを少しでも分かち合える関係づくりに今後も努力していきたいと思います」と話すのは、千葉県BBS連盟会長も務める石井啓誉(ひろたか)さん(38)。
「美浜区で開催した釣り大会では、地域の更生保護婦人会の皆さんが公民館でカレーをごちそうしてくれました。美味かったです。おふくろの味がしました」とは、市原市から参加している上妻和弘君(19)。市原市のボランティアセンターを通じてこの活動を知り、参加した。活動中、互いの住所を聞いてはいけない、個人的な交際はしてはいけないなど、いくつかのルールが決められている。しかし、相談機関から依頼があった場合については、継続的なともだち活動も可能になる。担当の少年と個人対個人でじっくり向き合える時間が多い“ともだち活動”は、本当の兄や時には友人のように近い存在になれる。
「例えわずかであっても少年と近づけたと感じる瞬間は日ごろあまり味わうことのない喜びです」「意識するとかえってぎこちなくなるので、とりあえずお互い楽しく過ごせればいいと思い、構えることなく普通に接しています」「自分の知らない世界を知り、いろんな出会いも楽しみです」と若いメンバーたちは話す。
「時代が変わっても子どもの本質は変わっていないのです。変わったのは大人の方だと思います。変にものわかりの良い大人が増えましたね。悪いことをしている少年を見かけても、知らんぷりして注意しない」「昔はね、決まって声をかけてくる近所のオバチャンたちがいたもんです。今は見かけませんね。わが子でさえ、言えない親もいます」。先輩メンバーたちは、若いメンバーにジェネレーションギャップを感じながらも、裏方役に徹して活動を支える。未来を担う青少年の健全育成をめざし、今後は老人ホームなどの奉仕作業も取り入れた活動を広げて行く予定という。
 同じ時代を生きる若い世代相互の地域ボランティア。千葉県で活動が始まって今年で50年になる。また、千葉文化センターで、千葉県BBS運動発足50周年記念大会『さまよえる子どもたちの心“こころのよりどころ・ふれあい”』のテーマとして、少年との関わりの深い4名のパネラーを迎えてのシンポジウムも開催されました。

これは当時、地域新聞社シティーライフが取材し、掲載した紙面の記事です。  【左から石井氏、前原氏、上妻氏】                           

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